水生植物とその根圏に生息する微生物の機能を活用して水環境のアルキルフェノール汚染を効率的に浄化することを目的として、本年度は水生植物根圏のアルキルフェノール分解能を評価するとともに、アルキルフェノールの分解を促進する水生植物の役割の解明と根圏でアルキルフェノールを分解する特殊な微生物を検索することを試みた。抽水植物ヨシを供試植物として、その根圏で4-n-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、4-tert-オクチルフェノール及び4-ノニルフェノールの分解実験を行ったところ、ヨシが存在しない非根圏に比べてヨシ根圏では、いずれのアルキルフェノールの分解も促進していることが明らかとなった。また、ヨシはその根圏に酸素、易分解性炭化水素とフェノール性物質を分泌していることも明らかとなり、それらの分泌物がアルキルフェノール分解の促進に寄与しているものと考えられた。また、ヨシ根圏から4-n-ブチルフェノールと4-tert-ブチルフェノールを分解する数種類のPseudomonas属細菌とSphingobium属細菌を分離することに成功した。これまでに4-tert-ブチルフェノール分解菌を分離した報告例はなく、4-n-ブチルフェノール分解菌も数種類程度が分離されているだけであり、これらの分解菌の分離は難しいものと考えられてきたが、ヨシ根圏から数種類の分解菌を分離することができたことは、ヨシ根圏にはこれらを集積する特殊な効果があることを示唆するものとなった。
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