研究概要 |
鉱山跡地のような斜面の重金属汚染現場の対策には,侵食による汚染拡散を防止し,荒廃した土壌生態系を修復する必要がある.そこで,本研究では植物根圏の水分涵養・地盤安定機能と,リン資材による鉛不溶化効果を組合せた,新しい汚染修復技術の実用化を目指す. 平成19年度は,リンと鉛の化学反応に及ぼす植物根の作用メカニズムの解明に重点をおいて実施した.根の生化学作用をリン-鉛の化学反応の促進に利用し,緑鉛鉱の生成量を増加することができれば,土壌中の鉛拡散を抑制とリン資材の添加量の節減に貢献できると考えた. そこで,異なる科から選んだ植物8種類を用いたポット栽培試験を実施した.鉛汚染土壌にリン資材(水酸アパタイト)を添加し,植物を100日間生育させた.そして,土壌の鉛形態に対する植物根の生化学影響の有無を確認するために,土壌は根周囲の土壌とそれ以外の非根圏土壌に分けて採取し,土壌の鉛の化学形態を分析した.SPLP法による鉛抽出の結果は,イネ科植物を生育させた根圏土壌のほうが鉛の溶出が抑制されたことを示した.逐次抽出法によっても,これらの植物の根圏土壌の鉛が,溶解しにくい分画に変化していることが確認できた.現在この土壌のEXAFS分析を実施し,結果を解析中である. さらに,根圏土壌分割カラム装置を作製し装置の使用具合を確認した.今年度はこの装置を用いて根圏の生理特性と不溶化の関係を詳細に明らかにする.同様に,土壌微生物や酵素の解析も進め,不溶化との関連性を明らかにする.
|