研究概要 |
地下水帯の嫌気的脱塩素化バイオバリアでは、増殖微生物と発生ガスによる間隙の閉塞を原因とする脱塩素化能の失活、流れの阻害によって、不完全浄化による汚染拡大、地下水位上昇による地盤支持力の低下などを招く恐れがある。バリアには浄化能および通水能の長期的持続が求められ、分解能の評価だけではなく、透水性との関係の定量的評価が重要である。つまり、微生物活動に依存するバリアの透水性低下の限界点、「水理学的寿命」の評価が欠かせない。そこで、バイオバリアにおける透水性変動評価モデルを構築することを目的とした。 嫌気性微生物群集によるトリクロロフェノールの脱塩素化カラム試験によって、電子供与体の過剰供給系における透水性に関する寿命評価を行った。安定した脱塩素化系が形成されるまでに透水係数が4オーダー近くも低減したが、カラム上流5cmの区間での捕捉気泡と堆積微生物による間隙閉塞が透水性低減に対して支配的になった。空間的分布では堆積微生物では5cmまでの堆積量が最も多く、指数関数的に低減したが、捕捉気泡ではばらつきはあるものの位置によらずほぼ一様分布となった。間隙占有体積では、微生物に対して気泡は上流部で数倍程度であるため、気泡の透水性低減効果が支配的であることが示唆された。脱塩素化能はこの領域で最も高くなっており、バリアの性能を維持する重要な役割を担っており、水理学的寿命を決める要素がバリアの脱塩素化性能に対する応答性を調べる必要があることが示唆された。一方で、透水係数変動評価に関する一次元モデルを構築した。複合的反応である脱塩素化反応系において、主たる微生物活動である有機酸分解の反応速度をMonod式で表現し、全体の微生物増殖を再現できると仮定し、併せてメタンと二酸化炭素の気泡生成を飽和度と静水圧との関係を定式化した。さらに、微生物移動に関するTwo-region,three-site微生物輸送モデルを組み合わせた。実験により決定されるパラメータである気泡捕捉率を導入して、間隙率を変数とした透水係数変動評価モデルを構築した。これにより、機能性と安全性を考慮したバイオバリアの設計に役立つと考えられる。
|