宮城県北部に位置する伊豆沼周辺の水鳥給餌池(50m×100m)を対象とし、池内外の経時的な水質および微生物相変化、とくに水鳥飛来の有無による原生動物や糞便性大腸菌相の動態を把握することを目的とし、2007年5月から約2週間に一度、調査を行った。その結果、以下の成果が得られた。 6月から10月中旬にかけ、COD、 SS、 T-N、 T-P濃度に著しい変化はみられなかったが、水鳥(主にオナガガモ)の入込が確認された11月以降、上昇傾向を示した。とくにSSは12月以降の増加が著しく、最大時には約150mg/1に達した。その要因として、水鳥の排泄物や残餌、さらに水面の撹乱による底質の巻き上げが推察された。また、T-Nの増加はSSの増加や、排泄物の分解によるNH_4-Nの増加が要因として考えられた。全菌数は実験期間を通して10^6-10^8cells/mlの範囲にあった。有機物の増加に伴い、従属栄養性細菌も増加した可能性が示された。一方、大腸菌群数については、10^2-10^4MPN/100mlの範囲にあり、11月以降の著しい増加は確認されなかったが、水鳥の入込がなかった別の池において減少傾向が見られたことを鑑みると、水鳥の排泄物による表層水中の大腸菌群数への影響がある可能性が示された。大腸菌群を検出した試料からは、大腸菌の分離を行った。また、原生動物について、調査期間中に10種程度の遊泳性繊毛虫類が観察された。さらに、植物プランクトンの優占種が変化することが明らかになった。 以上の成果は、当初の目的である現地状況の把握を満たし、次年度以降の研究の遂行に非常に意義のあるものである。水鳥の飛来による水質、とくに微生物相影響については明らかになっていない点が多く、小規模池沼内における微生物生態系に関する研究の重要な知見となった。
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