宮城県北部に位置する伊豆沼周辺の水鳥給餌池(50m×100m)を対象とし、池内の経時的な水質および微生物相変化、とくに水鳥飛来の有無による原生動物や糞便性大腸菌相の動態を把握することため、2007年5月から約2週間に一度、調査を行った。2007年から2008年にかけて、オナガガモの飛来数は最大で1200羽に達したが、2008年から2009年にかけて給餌を自粛したため、水鳥入込数は前年の約1/5であった。その結果、水質に以下のような大きな違いが見られることが明らかになった。 SSについて、2007年にはとくに12月から翌年2月の増加が著しかったが、水鳥の入込が少なかった2008年11月以降は著しい変化は見られなかった。2007年は水鳥が多く入込んだため排泄物や残餌、さらに水面の撹乱による底質の巻き上げが著しかったが、2008年は入込が少なかったため、その影響が小さかったと推察された。CODについて、2007年11月にはSSの増加に伴い増加した後、3月には減少し、2008年の7月、8月に再び増加した。夏季の増加は、藻類の増殖によるものと考えられた。2008年11月以降は、前年のような著しい変化は見られなかった。大腸菌群数は、水温の急激な低下に伴い減少したが、2008年1月には増加傾向が見られた。一方、2008年12月の大腸菌群数は前年よりも減少した。このことから、水鳥の入込数の減少に伴う可能性が示された。以上より、多数の水鳥の飛来は小規模な池沼の水質、とくにSSや大腸菌群数に影響を及ぼすことが明らかになった。 また、オナガガモやハクチョウの糞から大腸菌を分離し、DNA解析により種の同定を行い、池水中の大腸菌群の由来を確認した。 さらに、人工湿地を模した小型の実験装置を作製し、現地と室内によるマコモによる植生浄化実験を開始した。 以上の成果は、本研究の20年度実施計画である現地状況の把握、大腸菌の分離培養、植生実験装置の作製をおおむね満たし、今後の研究の遂行に意義を有するものである。
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