アラメなどの大型褐藻からなる藻場は海中林とも言われ、海洋生物の生育の場として重要な役割を担っている。しかし日本沿岸では、このような藻場が減少し、大型褐藻群落の見られない磯焼け地帯が拡大した。そのような現状において、これまでウニの過剰な摂食により衰退し続けていた宮城県泊浜地先の天然アラメ場海中林では、2006年春、新規のアラメ個体の再加入による自律的な回復が認められつつあった。この藻場の自律的再生能力発現のメカニズムを明らかにし、それを人工的に模倣・整備していくことで、再生された藻場の持続的な維持がはじめて可能になると考えられた。 そこで本研究では、自律的再生能力を有することで、攪乱に対する安定性が高く、持続的に維持される藻場の再生技術、ならびに維持管理技術を開発することを目的として、ウニの過剰な摂食により衰退していた藻場の自律的再生が、潜在的にどのような環境条件下、ならびに場所で発現しうるのか?を検討した。 水温の著しい低下(<6.1℃)が認められた冬季において、幼体加入によるアラメ場の回復が観察された。一方、高水温(>22℃)の観測された夏季の後には、アラメの分布域は後退していた。これらの一因として、水温変化に伴う植食動物ウニの摂食圧の増減の影響が推察された。また新規加入のアラメ幼体が生残し、成体を含むアラメ群落が自律的に再生した場所では、ウニの移入が制限され、流動によるウニの移動制限の可能性も示唆された。
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