研究課題
近接場光学顕微鏡は、金属ナノ構造と光の相互作用を利用することで、光学顕微鏡の空間分解能を飛躍的に向上させると同時に高い感度でラマン分光を行うことを可能にした。空間分解能の改善に力が注がれてきた近接場光学顕微鏡だが、ナノスケールの領域での多彩な情報を取得するための、他の分解能(波数、偏光)については未開拓であった。本研究では、近接場顕微鏡(近接場ラマン顕微鏡)の提供する高い空間分解能に加えて、波数、偏光についても改善を加え、より詳細な化学的情報を試料から引き出すことを目的としている。本年度は、従来型の近接場ラマン顕微鏡を改良し、不透明基盤上の試料を高い波数分解能測定できるシステムを開発した。試料として半導体材料として注目を集めている歪みシリコン表面をナノスケールで評価した。試料の局所歪みは、正常な格子振動のラマンピーク位置からのわずかなシフトを観測するので、高い波数分解能を必要とする。高感度測定を行うことができるという本手法の利点を生かして、分散能の高い分光器を接続し、短い時間内にナノスケールの空間分解能でシリコン表面の歪み分布を測定することに成功した。本手法はデバイスの小型化に伴い、近い将来、半導体表面評価手法の主流になると予想される。光の偏光は、分子の配向状態や対象性に関する情報を含み、ラマン分光においてもう一つ大事な要素である。従来の顕微鏡では、試料を回転させずにxyzの3軸方向の偏光測定を行うことができなかった。本研究では、光を高い閉口数を持つ対物レンズで絞り込むという近接場ラマン顕微鏡の性質と特殊波長板を組み合わせることで、試料を回転させずにxyz3軸方向の偏光測定行うことに成功した。さらに集光効率の見積もりを行い、ナノスケールでの偏光測定の基礎を構築した。今後装置の改良を重ねて、半導体、ポリマー材料のナノスケール測定を行う予定である。
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Journal of Microscopy 229
ページ: 217-222
Chemistry letters 37
ページ: 122-123
Journal of Raman spectroscopy in press