近年、磁壁の運動を利用したロジック回路やメモリなどへの応用が提案されており、微小磁性体中の磁壁操作手法の開発が重要な研究課題となってきている。超伝導体を利用した磁化状態制御手法に関して、我々は既にアイデアを特許出願しており、その基礎となる実験を行った。微小磁気ディスクと超伝導体からなる複合構造を半導体二次元電子ガス上に作製し、複合構造における磁気的相互作用を半導体二次元電子ガスの伝導特性変化を利用して高感度に検出した。超伝導転移温度以下で、微小磁気ディスクの磁気渦消滅磁場が高磁場側へシフトすることを観測することに成功した。それらの振る舞いはロンドン近似による見積もりにより説明することができた。また、超伝導体中の磁束量子と微小磁性体の磁気構造間の相関も観測している。現在、この成果は論文投稿中である。 同時に、電子線リソグラフィー等の微細加工技術を用いない素子作製法や漏れ磁場検出法を模索した。有機化学者との共同研究により、有機分子を用いた微小磁気構造の作製方法を検討した。今後、バラエティーに富んだ有機分子の特性を活かした革新的な磁気デバイスへの応用へ向けた研究へ発展させることができると考えている。また、金属ナノ接点における伝導測定にも着手した。単原子レベルにおける電気伝導測定を利用して、従来技術をはるかに超えた微小磁気検出方法の開発を検討している。
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