第一原理電子状態計算ならびに経験的電子状態計算の手法を基に種々のグラフェンを始めとする2次元系の電子物性、エネルギー論を明らかにした。また、動力学計算から、グラフェンの引裂のシミュレーションを行い、グラフェンの機械的引裂においては引裂の進行に向き依存性があること、すなわち、アームチェアと呼ばれる端を形成する方向に引裂が進行することを示し、機械的なプロセスにより形成されたグラフェンナノ構造においては、アームチェア型の端が主たる端構造であることを予言した。次に、同じ蜂の巣格子を有する六方晶窒化ホウ素において、そのネットワークン中に導入された欠陥のエネルギー論を明らかにした。その結果、多原子空孔においては、荷電状態かつ窒素過剰条件のもとで、窒素を端とする構造緩和を示さない三角形状を有する欠陥が安定であることを示し、実験的に観測されている欠陥構造の起源の解明をおこなった。また、近年の透過型電子顕微鏡実験において観測されている特異な端形状を有するグラファイトに対し、提案されている構造モデル、すなわち折り畳まれたグラフェンに対する電子構造の解明をおこない、この系が出発物質のグラフェンとは全く異なる特異な電子構造を有する金属であることを明らかにした。
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