シリサイド系強磁性体であるFe_3SiはDO_3構造をもつホイスラー合金で、ハーフメタルになり得る可能性が示唆されており、Si基板にエピタキシャル成長が可能である。Si基板上に良質なFe_3Siを成長できれば、安価で環境に低負荷なSi系磁性デバイスの開発が可能となる。しかしながら、Fe_3SiとSiの格子不整合のため、不整合転位のない良質な薄膜を得ることは難しい。そこで、我々は、不整合転位を生じずに応力を緩和するナノドットに注目し、Si基板上へのナノドット成長を試みた。 本年度、我々は、極薄Si酸化膜を用いることで、Si基板にエピタキシャル成長した超高密度(>10^<12>cm^<-2>)Fe_3Siナノドットの形成法の開発を行った。シリサイドは複雑な相図をもつので、まず、単純な構造しかもたないGaSb等の半導体材料で超高密度ナノドットが形成できるかどうかを確認した。次に、これらの技術を応用して、ほぼ単相のFe_3Siナノドットを超高密度に形成する技術の開発に成功した。この際、Si(001)面上へのβ-FeSi_2ナノドットの形成方法も同時に見出した。我々はこの形成したナノドットの断面TEM観察を行い、不整合転位がないことも確認した。さらに、SQUID装置を用いてこのナノドットの予備的な磁性測定を行った。数ナノメートルのナノドットは室温で超常磁性を示した。さらに研究を進めて、常温で強磁性を示す高密度ナノドットを形成することは、デバイス応用という点で重要な意味を示すと考えている。また、同時に開発したGaSb等の発光材料の物性を評価するためにナノ分光法の開発も行った。これは、一般のナノドット物性評価において、今後の研究に役立つと考えている。
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