昨年度に実現した、GaAs基板上に吸着したInコアフェリチンに対し、タンパク質殻の除去を試みた。タンパク質殻除去手法として、(1)OMVPE装置を用いてH_2及びAs雰囲気下での熱処理、(2)UV/O_3処理について検討をおこなった。AFM観察の結果、いずれの手法によってもInコアフェリチン由来のナノ構造体のサイズが減少した。しかしながら、(1)の手法を用いた場合には、ラマン散乱測定から熱分解黒鉛の生成が確認された。一方、(2)の手法の場合、熱処理を施しても熱分解黒鉛の生成は見られなかった。したがって、UV/O_3処理によって、タンパク質殻が除去できることがわかった。また、タンパク質殻の除去には、3〜4分のUV/O_3処理が必要であることもわかった。 次に、InコアのAs化をおこなう前段階として、In_2O_3焼結体をH_2雰囲気下で熱処理することによって、In_2O_3の還元が可能であるか検討した。その結果、15分の熱処理によってIn_2O_3基板は黄色から灰色へ変色し、また、電気伝導性が見られるようになった。つまり、In_2O_3が還元され、Inが生成したものと考えられる。この結果より、H_2及びAsの混合雰囲気下においては、InコアがH_2で還元されると同時に、As化される可能性が十分あることが示唆された。 タンパク質殻の除去に必要なUV/O_3処理時間においてはGaAs基板がダメージを受ける。そこで、GaAs基板がダメージを受けない最長のUV/O_3処理時間である2分で、タンパク質殻の除去をある程度おこない、その後、H_2及びAs雰囲気下での熱処理をおこなった。AFM観察の結果、Inコアフェリチン由来のナノ構造体が確認された。また、77KでのPL測定の結果、Inコアフェリチンに関連する発光が見られた。つまり、本研究の最終目標であるInAs量子ドット形成の可能性示す重要な結果が得られた。
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