本研究は、次世代のリソグラフィにおいてレジスト材料として使用が期待されているポリ(4-ヒドロキシスチレン)などにおける、中間活性種のダイナミクスやエネルギー付与における化学初期過程反応を電子線パルスラジオリシス法、露光装置による照射、分子構造計算などによって明らかにし、レジストのナノサイズのゆらぎへの影響を調べることが目的である。当該年度はレジストのラジカルカチオンを中心とする中間活性種の分子ダイナミクスと酸形成の関係、およびレジスト中の放射線誘起反応機構について明らかにした。 1電子線による実験および解析 電子線パルスラジオリシス法によって誘起される反応初期過程について明らかにした。サンプルにはレジストのモデル化合物であるポリ(4-ヒドロキシスチレン)(PHS)およびその誘導体を用いた。本研究により、電子線誘起によるPHSのラジカルカチオン種の挙動、分子内ダイナミクスおよび酸発生のメカニズムへの影響について明らかにした。また、ポリ(4-メトキシスチレン)においては、カチオンの生成量の増加ならびに長寿命化が明らかとなり、イオン対を経た新たな生成機構を提案した。また、電子線露光装置を用いた露光を行い、それぞれの高分子中での酸発生量の定量を行った。 2ab-initio計算を用いた高分子側鎖のダイナミクスの計算 パルスラジオリシスによって得られた分光データと理論計算に基づき得られた分子構造の最適化から導き出される分光的なパラメータとの整合性を確認した。
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