研究概要 |
昨年度、作製したポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)、ポリアリアクリルアミド(PAAm)を組織培養皿ポリスチレン表面上に導入すること成功し、その表面物性を評価した(PIPAAm-PAAm-TCPS)。本年度は計画通りにしたがい、PIPAAm-PAAm-TCPS表面を利用し、細胞接着および剥離性について評価を行った。37℃における、細胞接着性はグラフトとするPIPAAm量およびPAAmにより影響を受けた。PIPAAmの固定化量が0.22μg/cm^2のPIPAAm-TCPS表面に、PIPAAm量を0.85, 1.20μg/cm^2をそれぞれグラフトした場合、PIPAAm-PAAm-TCPSは細胞接着性を示した。しかし、1.60μg/cm^2のPIPAAmグラフト量では非細胞接着性を示した。一方で、PIPAAmのグラフト量が1.60μg/cm^2であるPIPAAm-TCPSでは、細胞接着性を示した。接着せた細胞は低温処理により細胞が剥離した。0.33μg/cm^2のグラフト量を有するPIPAAm-TCPSにPIPAAmをグラフトしても細胞接着性を確認することはできなかった。 PIPAAm-PAAm-TCPSの表面濡れ性の結果も、このような傾向を支持した。また、PSによる表面分析結果から、PIPAAm-TCPSの上層にPIPAAmが均一にグラフトされていることが示唆された。すなわち、PIPAAmの下層にPAAm層が存在する。これらの結果から、基材表面の物性の違いが、超薄膜状にグラフトしたPIPAAmの物性に影響を与えることが示された。これは、基材界面におけるPIPAAm鎖の凝集状態の違いによると推察した。
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