研究概要 |
シリコンをベースとしたオプトエレクトロニクス産業の実現に向けて、シリコンナノ結晶における光学特性を深く理解することが重要である。本研究では、1)シリコンを3次元的にナノ構造化することによって達成される量子効果に基づいた発光の起源を明らかにし、2)当該量子ドットを1ステップで合成できる環境調和合成法の開発を目指す。 3次元ナノ構造化シリコンからの発光起源に関する議論は、ポーラスシリコンの発光が1990年発見されて以来、今尚、続いている。本研究では、長鎖アルコキシ分子膜で表面大気接触から完全に保護したシリコンナノ結晶粒子(平均粒径3.6nm 標準偏差1.8nm)を液相合成法から作製した。シリコンの励起子ボーア半径は5nmであることから、当該実験を行うモデルサンプルとして、当該平均粒径および標準偏差は満足できるものであった。266nmのレーザー光を用いてサンプル励起し、光学特性を調べることで、シリコンにおける量子効果に基づいた発光は、従来報告されている可視領域ではなく、紫外領域にあると実証することに初めて成功した。さらに、当該有機不動態化表面を徐々に酸化させることにより、発光スペクトルは、レッドシフトすることを見出し、可視領域における発光は界面準位に起因すると結論づけた。 次に,このようなシリコン量子ドットを1ステップで合成可能な環境調和型合成方法開発を目指した。この方法で合成されたサンプルをプロトンNMR、カーボンNMRで調べたところ、粒子表面のシリコン原子はアルキル鎖とSi-C結合でリンクすることにより、不動態化されていることが明らかとなった。当課題研究2年目は、アルキル分子膜の充填密度を向上させ、シリコンナノ結晶最表面の不動態化の実現、及び、粒子サイズ制御を目指す。
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