これまで、超分子集合体の分野では、ミセルやベシクルなど球状の集合体が薬剤や化粧品など多方面で活用されている。しかし、ファイバーをはじめとした一次元の超分子集合体については、球状のものと比べて研究例が少なく、まだほとんど応用面での成果がないのが現状である。我々はこれまで、種々の長さをもつDNA(オリゴアデニル酸)と、長鎖オリゴメチレン鎖の両端にチミジル酸を連結したヌクレオチド脂質との二成分系自己集合体が右巻きのらせん構造をもつナノファイバーとなることを見いだし、報告してきた。本課題では、これまでの知見をもとに、鋳型DNAと自己集合性分子から形成される超分子ナノファイバーを検出素子とした、新規な一塩基多型解析システムの開発をめざしている。 今年度は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてDNAとヌクレオチド脂質から形成される超分子ナノファイバー構造を詳細に解析した。その結果、用いたDNA(オリゴアデニル酸)の長さを10量体から40量体まで変化させた場合、形成される超分子ナノファイバーのらせんピッチが、11nmから40nmまでほぼリニアに変化することを見いだした。CDスペクトル測定を行った結果、これらの二成分系集合体中ではオリゴアデニル酸の長さに応じてチミンおよびアデニンの配向が少しずつ異なることが示唆された。これらの構造の違いは、鋳型DNAの末端が水和されやすく、ヌクレオチド脂質と鋳型DNAの水素結合が切断されることにより生じるものと推察した。
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