ナノスケールのテープ状酸化物構造体は、その特異な構造からバルク系酸化物材料には見られない電気、光学、化学的特徴を有している。これらの特長を生かし、酸化物ナノテープの光導波路や高感度化学センサーへの応用が行われるなど、酸化物ナノテープの作成やその応用研究が活発に行われている。酸化物ナノテープの特性は、酸化物組成や、幅・厚さといったテープサイズにも大きく影響される。従って、材料組成やサイズを簡便かつ精密に制御することは、ナノテープの特性デザインする上で、重要な技術課題である。本研究提案では、液相ナノコーティング技術と鋳型ライン構造を利用し、サイズ(幅・厚み)と材料組成のナノスケールデザインを可能とする、液相型の酸化物ナノテープ作成プロセス構築を目指す。 研究初年度にあたる本年度は、「ナノテープの形成とサイズ制御」を目標とし、 1. テープ厚の制御 2. テープ幅の制御 3. テープ単離プロセスの確立 について検討を進めた。酸化物材料としては、SiO2を基本材料としてプロセスの評価に注力した。 テープ厚制御は鋳型表面上の酸化物薄膜の膜厚制御によって対応した。具体的には表面ゾルゲルサイクルの回数制御によって、数nm精度で薄膜厚の調整に成功した。テープ幅は鋳型ラインパターンの高さに対応するため、鋳型のポリマーラインパターンの高さを酸素プラズマ処理によって調整し、結果としてテープ幅をサブマイクロメートルから100nm程度の範囲内での制御に成功した。テープ剥離のために、基板と鋳型ラインパターン間にポリマー犠牲層を導入し、最終的に酸素プラズマによる分解除去でテープが基板表面上に物理的に乗っているだけという状況を作り出すことができた。これを溶液に浸漬して溶液中にテープを遊離させることに成功した。
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