DNAや抗原抗体などの機能性分子から分子デバイス構築などへの応用を目指す場合、相互認識により特異的な結合を形成する2分子間の相互作用を、温度変化などの環境に対して精密に理解することが重要かつ緊急課題である。本研究では原子間力顕微鏡と動的分子間力分光法を組み合わせることにより、新しい方法で分子間相互作用ポテンシャルを求めた。 環境変化に伴うポテンシャル曲線の精密な測定・評価を行うため、実験条件を変化させて、ポテンシャル曲線の多角的な解釈を行い、溶媒効果による分子の機能変化を明らかにした。 測定精度をさらに向上させるため、装置全体を低温インキュベーターに入れ、安定性を考慮する装置開発を行った。また、さらに温度変化を-10℃から80℃で行えるように装置を改良した。 測定した大量のデータを効率よく処理するために、測定コンピューター、データを保存するストレージおよび解析コンピューターを分離し、取得データを自動的に解析するシステムの構築を行った。これによりデータ処理能力が劇的に向上し、溶媒変化に伴うポテンシャル障壁の変化や結合アミノ酸の結合寿命の変化を測定することが可能になった。 また、この実験により、これまで実現されていなかったタンパク質の局所的な結合ポテンシャルを個別に分離して観察することに成功した。この結果は第27回表面科学講演大会において講演奨励賞を受賞し、今年度の成果として論文投稿した。
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