DNAや抗原抗体などの機能性分子から分子デバイス構築などへの応用を目指す場合、相互認識により特異的な結合を形成する2分子間の相互作用を、温度変化などの環境に対して精密に理解することが重要かつ緊急課題である。本研究では原子間力顕微鏡と動的分子間力分光法を組み合わせることにより、新しい方法で分子間相互作用ポテンシャルを求めた。 温度変化によるポテンシャル曲線の差を精密に測定した。4℃から60℃へ徐々に温度を上げていき、結合ポテンシャルの変化を測定することで、直接結合と架橋結合との差を解析した。直接結合では温度の変化によって障壁位置に変化は現れず、架橋結合の時は障壁位置に変化が現れた。このことから、直接結合では結合ポテンシャルの変化は小さく、架橋結合の場合は架橋分子の温度に対する平衡状態を考慮して解析する必要があることがわかった。 分子鎖とタンパク質の化学結合を変化させることによって、結合ポテンシャルを個々に分離して測定し、表面とタンパク質の相互作用が結合ポテンシャルの分離測定に関係していることを解明した。結合寿命がタンパク質の化学結合の状態で予想通りに変化することもわかった。また、それを利用することでポテンシャル障壁の変化を測定し、機能変化および結合箇所に依存した反応機構を解明した。 より複雑な破断を示すアビジンについて、上記分離測定と溶液中のイオン種変更によって、ストレプトアビジンとは異なり、溶液中の分子が架橋することなくビオチンと結合していることを解明した。
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