研究概要 |
今年度はドライプロセスにより単セルを作製し, その評価を行うこと。又, 最終的にはスタックを作製しその特性評価を行うことを目的として研究を行った。まず, シリコン上に製膜した金薄膜(スパッタリングによる), Gd添加セリア電解質薄膜(PLD法による), そして白金薄膜(PLD法による)の三層構造を持つ多層膜をシリコンウェハー上に堆積させ, MEMSプロセスを用いて作製した。具体的には, 多層膜上に単セル構造のマスクをフォトレジストにより作製し, SF_6を用いた高速原子線エッチング法により金薄膜まで単セル部以外の白金電極, Gd添加セリアを除去することによりシリコンウェハー上に垂直方向に金電極, 電解質, 白金電極と並んだ単セルを構築した。 作製した単セルを環境制御型4端子プローバーにより交流インピーダンス法を用いて比抵抗を計測した。インピーダンススペクトルは単セルの温度が上昇すると抵抗が小さくなるという熱活性型の傾向を示し, 金電極と白金電極は電解質により設計通り絶縁されていることがわかった。白金電極表面積で割った比抵抗は単セル温度約400℃で0.1Ωcm^2以下と見積もられ, 電流を取り出していない状態では十分低い比抵抗を示すことがわかった。この比抵抗はGdセリアの導電率から算出した抵抗値と同じ桁数であり妥当なものであった。 メタン酸素混合雰囲気における起電力測定は通常のデジタルボルトメータを用いた。起電力は水素に対する触媒能が高い白金電極側が正極となり, 最大で1mV程度であった。発電に必要とされる数百mVの起電力は得られなかったが, 白金電極が正極であること, 温度を上げると起電力が上昇するという傾向は観察されたため, 触媒能の差を利用して発電を行うという一室型燃料電池の最低減の特性は備えていた。このことからシリコンウェアー上にドライプロセスを用いてナノサイズのSOFCを構築するという初期の目的と特性評価を達成したといえる。
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