研究課題
カーボンナノチューブ・フラーレンといったナノカーボンマテリアルは、そのπ共役性により優れた電子伝導特性を有しているため、電子デバイス等への応用が大いに期待されている。光電変換デバイスへの展開もその一つであり、エネルギー問題の観点からも非常に興味深い。最近、一般的な同心円状のカーボンナノチューブとは異なる底の空いたコップを積み重ねた形状を持ち、かつ内部に大きな中空構造を持っている直径が50nm程度のカップ積層型カーボンナノチューブ(SCCNT)が報告されている。その中でも、我々は光電変換材料としての機能性に着目し、その基礎的な物性を得るために酸化スズ透明電極基板上(OTE/SnO_2)に電界析出法を用いてSCCNTを集積した薄膜(OTE/SnO_2/SCCNT)を作製し、その詳細な光電気化学特性に関する評価を行った。特に本研究ではカップ積層型カーボンナノチューブ修飾透明電極(OTE/SnO_2/SCCNT)の光電気学特性について基礎的な情報を得るため、SCCNTのチューブ長依存性及び色素分子と共役効果について検討を行った。カップ積層型カーボンナノチューブはボールミル法によってチューブ長を制御したものを3種類準備した(0.2-1.0μm: S-SCCNT, 1-5μm: M-SCCNT, 5μm 以上:L-SCCNT)。これらの構造特性については透過型電子顕微鏡(TEM)、光学顕微鏡、紫外可視吸収スペクトルを用いて明らかにした。電気泳動法による薄膜作製後、光電変換特性に関する評価は作用極にOTE/SnO_2/S-SCCNT、対極に白金、電解液に0.5 M NaI及び0.01 M I_2のアセトニトリル溶液を用いた湿式二極系、さらに参照極に飽和カロメル電極(SCE)を加えた湿式三極系を用いて系統的に比較を行った。湿式三極系を用いた場合、OTE/SnO_2/S-SCCNTの光電流発生のIPCE値(光電流発生の外部量子効率)は最高20%程度まで向上し、良好な光電変換特性が得られた。一方、色素分子としてポルフィリン(H_2P)を導入し<S-SCCNT-H_2Pの分子複合体をアセトニトリル/トルエン混合溶媒中で作製した。湿式3極系条件下における光電流発生のアクションスペクトル測定ではIPCEは最高32%まで向上し、SCCNT及びH_2Pのそれぞれ単一成分による薄膜電極の測定結果と比較して大幅な光電変換特性の向上が確認され、SCCNT-H_2P複合体による共役効果が確認された。この共役効果蛍光寿命測定を行ったところ、SCCNT-H_2P複合体での光誘起電子移動を示す寿命成分が観測されたことからSCCNT-H_2P複合体における良好な光電流観測はSCCNT-H_2P複合体内での光誘起電子移動であると結論づけることが出来た。
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