本年度はポルフィリン-カーボンナノホーン複合体の合成のみならず、ポルフィリン色素単独でナノチューブ・ナノロッド等の棒状構造を形成するような新規な有機超分子材料の創製について検討した。 (1) 新規ポルフィリン-カーボンナノホーン複合体の合成と光物性 近年、合成手法を用いたカーボンナノチューブと色素分子の組織化は数多く報告されているが、特徴的な構造を有するカーボンナノホーンはこれまでのところ報告例がほとんどない。ポルフィリン分子が共有結合により集合化したカーボンナノホーンを新規に合成し、まず、その光誘起電子移動について詳細に検討した。その結果、ポルフィリンの励起一重項状態からカーボンナノホーンへの良好な光誘起電子移動が蛍光寿命測定及びナノ秒過渡吸収スペクトル測定から観測された。さらに電気泳動法を用いて酸化スズ透明電極上に薄膜化を行い、光電気化学セルの構築・評価を行った。その結果、ポルフィリン-カーボンナノホーン複合体を修飾した薄膜電極のIPCE値(光電流発生の外部量子効率)はそれぞれの単一構成分子による薄膜電極及びその単純和と比べて高い値を示しており、複合体内部における電荷分離プロセスが光電変換特性に大きな影響を与えていることを定量的に明らかにした。 (2) アクセプター分子が内包したポルフィリン棒状集合体の構造制御と光物性 まず、メソ位にピリジル基を有する亜鉛ポルフィリンとフラーレンC_<60>に界面活性剤としてCTABを用いてアセトニトリル/DMF混合溶媒中で超分子集合化を行うことによりフラーレンC_<60>が内部包接されたポルフィリンナノロッドの合成・作製に成功した。また、時間分解分光測定から一重項励起状態を介した光誘起電子移動及び良好な光電変換特性が観測された。
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