数理最適化・統計的学習の二つの分野の融合領域を開拓することを目的として研究を行なった。 具体的な研究対象として、金融分野で研究がおこなわれている、金融資産への投資配分決定問題をとりあげた。統計的学習の理論に基づいて、将来、予測されるリスクを最小化するような数理最適化モデル(ポートフォリオ最適化モデル)を構築し、効率的な解法の提案を行なった。 多くの従来モデルは、いずれも、観測データ(過去のデータ)に対して最も良い意思決定が行われるように構築されていた。しかしながら、過去と同じ状況がこれから生じるわけではないため、過去のデータについて最適なモデルがこれからのデータにうまく適合するとは限らない。そこで、統計的学習の知見を取り入れて、汎化能力(新たなデータに対する予測能力)の高いポートフォリオ最適化モデルを構築した。日経225の過去データ10年分の一部を用いてモデルのパラメータを学習し、残りの過去データを用いて検証を行ない、他の標準モデルに比べて平均収益が高くて収益のぶれの低いポートフォリオが得られたことを確認した。汎化誤差が小さいという理論的な側面だけでなく、実際の金融データへの当てはまりがよいという、実践的な側面も評価することができた。この研究成果を2本の論文にまとめ、現在、投稿中である。 また、他の研究として、統計的学習分野で研究の進められている、教師あり学習を用いる識別手法の一つであるサポートベクターマシーンに対して、ロバスト最適化モデルという新しい解釈を与え、拡張モデルを提案した。この成果は現在、論文としてまとめている段階である。
|