近年の科学技術の進歩に伴い、システムが巨大化・複雑化している今日、事故や故障による社会的損害は計り知れない。故障を防ぐにはシステムの構成要素である部品一つ一つの耐久性を向上させるとともに、そのシステムの運用段階において監視装置を用いた予兆情報などにより故障を事前に抑えることが重要となる。GPSを用いた衛星通信やナノセンサー、ICタグなどの誕生・普及によりシステムの状態診断が遠隔地でも可能となりつつある。このような監視装置を用いた予防保全は状態監視保全と呼ばれ原子力発電プラントや航空機などにおいて重要な役割を果たしている。 本研究は従来研究と同様にPOMDPモデルを用い、状態監視保全をモデル化し、最適保全方策について検討した。従来研究で用いられている状態確率ベクトルII及び状態推移行列Pの順序付けに対するTP2の確率順序をSIに緩和した場合の考察を行い、Monotone Procedureが最適となるための十分条件を導出した。今回の研究成果を国際会議にて発表し、信頼性分野の専門家と有意義な意見交換を行った。また、POMDPモデルがより現実の状態監視保全のモデルとして有効になるように、実際に行われている種々の状態監視保全の例を収集し、安全監視保全を含めて、モデルの改良を行いつつある。さらに、これらの結果を踏まえ、GPS、インターネットを用いた遠隔診断を行なう為の模擬シミュレータを開発しMonotone Procedureの有用性を示したい。
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