近年の科学技術の進歩に伴い、システムが巨大化・複雑化している今日、事故や故障による社会的損害は計り知れない。故障を防ぐにはシステムの構成要素である部品一つ一つの耐久性を向上させるとともに、そのシステムの運用段階において監視装置を用いた予兆情報などにより故障を事前に抑える予防保全が重要となる。本研究はナノセンサー、ICタグなどのような監視装置(以下モニターと呼ぶ)を用いて対象システムの内部の状態を間接的に観測する状態監視保全を着目し、最適保全方策とその応用について検討する。 本研究では、まず最初に、対象システムがマルコフ劣化し、その内部状態が直接把握できず、モニターの観測値に基づき、真の状態を推測する部分的に観測可能なマルコフ決定過程(POMDP)を用い、状態監視システムをモデル化し、状態監視保全の最適保全方策がMonotone Procedureにより与えられる為の必要十分条件を導出した。POMDPモデルにおいて、状態監視保全の最適な保全方策がMonotone Procedureの中に限定される為の条件は40年以上にわたり、数多くの研究者により検討が為されてきた。本研究はこのテーマに対する理論的な最終結論を与えたものとなる。 次に、Monotone Procedure以外に、現実の状態監視保全でよく使われているk-out-of-n方策の最適性も検討し、最適保全方策がk-out-of-n方策により与えられる為の必要十分条件を示した。 これらの結果を日本品質管理学会学会誌および日本信頼性学会学会誌へ投稿し、情報を発信した。
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