研究目的、および研究計画・方法の「【I】H.19年度の計画A」にて記したように、ファイナンス理論の扱える領域を飛躍的に拡大すべく、「属性を有する資産の価格とリスクの評価方法に関する『理論』研究」を重点的に行い、これに関する研究発表を国際・国内会議等にて精力的に行った。その概要を以下に述べる。本研究では、不動産のように属性を有する資産の価値評価方法を構築した。経済学では、将来に亘ってキャッシュフローを生む資産の価値は「経済主体が将来のキャッシュフローから得る限界効用の、現在のキャッシュフローから得る限界効用との相対比」を介して評価される。不動産のように属性を有する資産は、居住等の用途として利用することができる。そのとき利用者は、不動産が提供する「属性の束」を享受することができ、その対価として賃料を支払う。よって、属性の束の価値は「経済主体が属性の束から得られる効用限界の、同時点におけるキャッシュフローから得られる限界効用との相対比」を介して評価される。こうして不動産のような資産の価値は、その資産が将来に亘って提供する属性の束を一旦キャッシュフロー価値へ変換した上で、さらにそれを現時点における価値に変換することにより求めることができる。本研究では、属性を有する資産全般に対する価値評価の一般理論を提案し、あわせてその取引市場と均衡条件を考察した。また、本研究の基礎と位置づけられる「レジーム・スイッチングを考慮した不動産価値評価」に関する研究が、和文・学術誌に採択された。
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