本研究過程においては、平成19年度の研究成果を活用させながら、映画の国際共同製作を媒介とした日本と他国との国際交流促進策に触れた「日本の映画祭の現状と課題に関する調査報告-東京国際映画祭と湯布院映画祭に係る事例を機軸に据えながら-」という調査論文を執筆し、芸術工学研究(九州大学大学院芸術工学研究院・紀要/4009vol.10)において掲載発表した。それ以外にも、九州大学大学院芸術工学研究院における各種担当授業等の機会をとらえて、本研究を通して得られた研究成果を、適宜、教育現場において還元した。 さらに、本研究過程においては、平成19年度の研究結果をさらに発展させる形で、映画の国際共同製作の実施に関連するマネジメント方法の最新動向を探り、さらに、映画人が映画の国際共同製作を実施するパートナーを発見するための場そのもの、つまり映画人が自らの映画企画を国籍の違う映画制作者や投資家、プロデューサーに対して売り込むための場(通称「企画マーケット」)を、日本国内においてどのように政策的に作り出していくべきか、という課題を研究分析することを行った。その過程で、国内外で開催される映画の企画マーケットの制度、参加手続、権利取引、歴史、政策的意図、傾向、将来的方向性などを探るために、2008年10月に開催された東京国際映画祭、そして2009年2月に開催されたベルリン国際映画祭に参加し、同映画祭付属のフィルムマーケットの実情を調査した。その結果、両映画祭における、映画の国際共同製作の促進を目的とした企画マーケットの現状と課題についての情報獲得に成功した。これらの研究成果は、日本と欧州やアジア各国との間における映画の国際共同製作の促進を目的とした、多種多様な企画マーケットの実施に係る芸術文化政策の方向性について、重要な示唆を与えるものであった。これらの研究成果についても、九州大学大学院芸術工学研究院における各種担当授業等の機会をとらえて、適宜、教育現場において還元した。
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