当該年度は、研究実施計画に盛り込まれていたmax-min型協調的戦略操作不可能な社会選択対応とナッシュインプリメンテーションとの関係を調べることから調査を始めた。しかし、思った以上には、その間に密接な関係を見出すことはできず、むしろ、この2つの関係を知るためには、他のタイプの操作不可能性の定義を考えることが有意義であるということまではわかった。その一方で、2つの面から異なるアプローチをすることによって、社会選択というものの様相を調べた。ひとつは、集団的意思決定問題におけるデータを利用した実験的側面からの研究である。具体的には、新鉄道路線の導入に伴う影響の要因を分析する際、個々の意思決定者が持つ要因に対する関係図を用いて、その要因関係図を集団的にまとめることの困難さに関しての研究を行った。実際の新鉄道路線の周辺住民による意識調査を入力データとして用い、各意思決定者に要因関係図を作成してもらう。それを利用して戦略的操作を無視したとしても集団的な集計が可能であるのか、ということを調べた。実際には、学習という要素を考慮することによって集計の可能性はあるものの、初回の集計では不可能な側面が多くあるということがわかった。もうひとつは、個人の選好が単峰性を持つ場合の戦略的操作不可能な社会選択対応に関する研究である。特に、選択する選択肢の数を2個に限定してみることによって研究を行った。実際、この研究に関してはまだ限定的な結果しか得られておらず、今後も解明していく必要がある。
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