研究概要 |
本年度は前年度の株価予測可能性の検証を元に, 株価予測システムを構築するために必要な情報, 特に時系列データだけでは得られない人間の心理的作用に関する情報を得るためのシミュレータをJavaにより作成した. 作成したシミュレータは株価が表示され, 資産の何%を投資するかを決定するものである. このシミュレータを用いて経済学実験を行った. 実験の結果, 人間の感覚概念と同様の現象(例えば,ディスポジション効果)が見られた. つまり, 人間が受ける刺激の大きさによって感じ方が異なるように, 資産の損益の状況に応じて, 似た株価の変動に対して投資率が異なる(損をしている時はリスクを好み, 得をしている時にはリスクを回避する)ことがわかった. またこの現象は男女差がある(男性の方が資産の損益の影響を受けやすい)こともわかった. さらにこの実験を踏まえ, 2つのエージェントベースシミュレーションによってさらに検証した. 1つめはどのようなタイプの投資家が株式市場に生き残るのかを遺伝的アルゴリズムを用いて検証した. 2つめは情報伝達過程がどのように株価に影響を与えるのか, つまり現在のようなネットワークの発達によるロコミなどの情報伝達過程が株価にどのような影響を与え, その結果株価の予測に影響を与えるのかを検証した. 以上の実証結果を踏まえ, 株価変動予測システムを構築した. 現在, 構築したシステムは十分な精度であるとは言えないが, 人間が関わるシステムでは感覚概念のような心理的作用の応用が重要であることが示唆できたと思われる.
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