研究概要 |
程度副詞を用いた協働作業の人的特性を抽出するための基礎的実験を行った.複数のテーマにおいて実験を行ったが,具体的には,距離の程度(長さ・距離の目測を要する作業),揺れの程度(揺れの量の大きさの目測が必要な作業)について,程度副詞を用いた実験を行った.とくに距離の程度については,これまでは,実験室における実験のレベルすなわち10cm~100cmくらいの長さに関わる実験が主だったが,本年度は10mを上限にした実験を行い,実距離と心理的距離の相違と,程度副詞の関わりについて検討することができた.実験方法は,昨年度までと同様に,理物理学的測定であるマグニチュード産出および推定法によって物理量と心理量(感覚量)との間の関係を定量的に捉え,その上で,それぞれの程度副詞を用いると,物理量と心理量との関係からどのくらいの隔たりをもって被験者はその「程度」を認識するのかを明らかにする,というアプローチで行った.さらに,実験で得られた知見および本年度まで得られた成果に基づく考察をもとに研究者自身が導いた人的モデルを産業分野に応用すべくいくつかの企業とディスカッションを行い,実用化への課題を明らかにするとともに,有用性についても検討した.H21年度は,研究成果を論文形式にまとめることができたのは2編で,うち1編は論文,1編は学会等発表講演集掲載の抄録である.論文として発表されたのは,昨年度の成果報告に記載した面積および情報に関わる程度に関するもので,情報を呈示する際のかたまりと色遣いの2点に絞って検討を行い,すっきり感・ごたごた感について定量的な結果を導くことができた.そして,情報呈示の在り方を考える応用的な側面ばかりでなく,面積知覚の内的な過程を探るといった基礎的な面においても,今後の可能性を探ることができた.
|