研究概要 |
研究機関間の異動など研究者の流動性とは何を意味するのか。平成18年4月から実施されている第三期科学技術基本計画では,研究者の流動性には,人事における健全な競争の促進と公正さの担保,大学間の健全な競争の促進と深い関係があるとされている。この背景には,研究者が機関間を異動することによって,従前とは異なる研究環境に身を置くことで新たな刺激を受け,自らの創造性を高める効果や,国内外における研究者間のネットワーク形成の促進への期待があると考えられる。しかし,そのような因果関係や相関関係を立証する研究はあまり実施されておらず,裏付けは十分ではない。 本研究では,政府からの研究開発資金の多くを使用しているという観点から,研究者のうち特に国公立大学教員に焦点を合わせ,その流動性が何を意味するのかを実証的に明らかにすることを目的とする。具体的には,書店で販売されてきた「全国大学職員録」(廣潤社)の掲載情報を電子化し,その属性別の時系列的変化から研究者の流動性の意味を実証的に分析する。平成19年度の研究から,教員が国公立大学間を異動する場合,半分以上の割合で昇格を伴うこと,国公立大学教員全体の平均年齢が上昇している一方,異動教員の平均年齢は低下していることなどが判明した。今後,国公立大学教員の流動性と大学間の競争との関係などについて研究を進めたい。 なお,本研究の目的は特定個人の状況追跡ではない。また,研究にあたっては個人情報を取り扱うことから,その漏洩防止に万全を期することとする。
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