研究概要 |
最終年度である平成21年度は,数値計算による浮き上がり火炎と実験結果の比較を行った.数値計算には,米国NISTが開発した火災シミュレーターであるFDS (Fire Dynamics Simulator) ver.5を使用した.座標系には軸対象を仮定して円筒座標系を使用し,格子間隔0.5mm,格子数10,800とした.有限燃焼速度を持つ総括一段反応の燃焼モデルを採用し,計算方法は直接計算(DNS)とした.着火は燃料液面に設置したヒータに2秒間,800℃を与えることにより行った.計算は実時間相当で20秒まで行った. 着火時の挙動を観察すると,ヒータ周囲の燃料液面に着火した後,火炎が液面を約5秒間かけて拡がっていった.これはFDSが燃料の液内対流,特に表面張力流を考慮していないため,燃料表面の温度上昇を実際に比べ低く見積もっているためと考えられる.また,燃焼反応モデルには燃料濃度および酸素濃度に対し,経験的に決定される次数が含まれているが,この次数を最適に設定することで,実験と同様に浮き上がり火炎を数値計算上で得ることができた.この結果から,浮き上がり火炎のように消炎限界に近い状態での火炎を適切に再現できるように経験的次数を設定することで,適切な燃焼反応モデルを設定することができる.以上の結果より,酸素供給に関して消炎限界に近い微小重力環境での火災シミュレーションや浮き上がり火炎のシミュレーションを行う上で必要な燃焼反応モデルの適切な設定を得ることができた.
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