研究概要 |
『流体計算技術と地理情報システムを相互連した新しい防災・危機管理システムの構築』 を実現するために,平成19年度は以下に示す個別研究開発を実施した. 実在市街地を対象とした数値シミュレーションを実施する際には,気流の予測精度が非常に重要である.そこで,建築学会から2007年に発表された数値シミュレーションに関するガイドブックに記載の市街地のベンチマークシミュレーションを行った.得られた結果(流入風速に対する風速比)は,風洞実験結果および他の商用コードと定量的にも定性的に良い一致を示し,本研究で開発している計算コードの有用性が示された.同一の対象地域において,不安定から安定までの広範囲に変化する大気安定度を考慮した計算も行った.中立時とは異なり,大気の鉛直方向の温度分布が変化することで,建物周辺気流が劇的に変化することが示された.得られた気流場に基づいて,パッシブ粒子の拡散場シミュレーションを行い,市街地の中で放出されたガスが建物影響を受けて移流・拡散する挙動を再現することができた.市街地に流入する気流の変動が与える影響についても検討を行い,一部その影響が顕著に現れる領域もあるが,建物からの剥離流が形成する乱れが概ね支配的であることが示された.市街地を対象にした気流予測シミュレーションでは,樹木などの障害物の影響も非常に重要となる.そこで,既存の風洞実験をより良く再現可能な単独樹木の数値モデルを新たに提案した.これを拡張させて,実在する建築物の周辺に複数の樹木を配置した場合の検討を行い,ビル風などの局所的な増速を軽減できることを示すとともに,提案する樹木モデルの有効性を示した.本研究で得られた一連の研究成果は国内の学会で研究発表を行なった.
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