災害発生直後の医療機関は、自施設の安全性確保しつつ災害による傷病者に対する新たな医療サービス(災害医療)を提供しなければならない。2004年新潟県中越地震においては一部の病院で建物構造体の一部大破、ライフラインの途絶等により病院全体が機能不全に陥った。災害時の病院の安全性確保は喫緊の課題であるが、病院の経営効率改善が強く求められる昨今では災害対策が遅れている傾向にある。さらに現時点では医療機関の防災力を定性的に表した指標は無いことから、各医療機関では自助努力により独自の取組みを行っており、結果的に平常時の業務改善対策に優先される場合が多い。そこで本研究では、医療機関の防災力を一元的かつ定性的に診断・評価する指標構築を行う。また、診断指標を複数の災害拠点病院にあてはめ、その結果より再構築を行いその有用性を高める。本診断指標を医療機関の防災力評価の客観的指標の一つと位置づけ、医療機関の災害対策を促し防災力向上に貢献する事を目的とする。 本研究課題の初年度(平成19年度)では、医療機関の実情を反映できる診断指標構築を目的とし、2007年能登半島地震および2007年新潟県中越沖地震時における医療機関被害事例調査を実施した。その結果、医療機関建物が十分な耐震性を有している場合やライフライン設備、特に給水設備に関して井戸や雨水利用などの設備を保有する場合は、地震発生直後の災害応急対応が円滑に行われる事が明らかとなった。これら地震被害調査結果およびその他の病院実地調査結果も踏まえ、医療機関の防災力診断指標のプロトタイプを構築した。ここで、診断項目は、(1)立地・ハザード特性、(2)建物特性、(3)ライフライン特性、(4)医療機器特性、(5)通信特性、(6)災害対応特性、(7)経営特性、(8)病院特性の8項目とし、各項目の直接評価係数を考案し、結果をレーダーチャート式図で示した。
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