研究概要 |
リスク許容基準に関する既往の研究成果(各国の原子力に関するガイドライン,安全工学やリスクマネジメント分野における心理学的,ミクロ経済学的,政策工学的アプローチに関する理論的、実証的研究)をレビューし,リスク許容基準に影響を及ぼす要因の抽出を行った。また,人々の許容リスクに影響を及ぼす大きな要因である社会基盤の機能障害発生確率(道路,鉄道,電力,水道,ガス,下水道,通信網等)を評価するために,公表資料に基づいて過去数年の間に実際に発生した社会基盤の機能障害事例の整理を行った。 得られた要因を説明変数とした個人の許容リスク評価のための調査票を作成し,大学生46人を対象としたパイロット調査を実施した。その結果,被害(人的被害)の大きな事象ほど,実際よりもその発生頻度を低く見積もる等の,リスク認知のずれに関する既往研究成果と整合的な結果が確認され,そのことが個人の許容リスクに影響を及ぼしていることが明らかとなった。 また,経済的影響も含めた社会基盤機能障害の影響の大きさを,より客観的に評価するために,既往の研究成果を基に,各種社会基盤の機能障害に対する社会経済影響の評価手法について,供給系(電力,水道,ガス),交通系(鉄道,道路),通信系(携帯,固定電話),その他(下水道等)に分類し,各社会基盤分類に応じた個別の被害影響の分析手法について整理を行った。さらに,2004年に発生した新潟県中越地震による被災の経験がある企業を対象とした調査結果を踏まえ,各種社会基盤が複数同時に被災した場合における,個別の企業活動が受けた影響の大きさについて基礎的な分析を行った。
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