研究概要 |
2007年7月16日に発生した新潟県中越地震後による個別企業への経済影響調査の結果をとりまとめ,電力,上下水道,ガス,通信,交通被害等の各種インフラの被害影響の大きさとその継続時間を明らかにした.特に,企業の所有する建物や設備などの被害と各社会基盤被害の影響を分離して推計していることが本調査の特徴であり,自社の施設に要求される対策水準と社会基盤に要求される対策水準とのバランスや優先順位を検討するための貴重な資料となっている.また,各企業が実施した被害軽減対策についても整理を行い,これら被害対策の事前準備の状況,実際の実施状況と被害軽減効果の関係について検討を行った.得られた分析結果は,各社会基盤の機能支障による個別企業への影響を計測し,各対策導入の効果を検討する上で重要なデータベースとなる. 次いで,各社会基盤被害が地域全体に及ぼす経済的影響をシミュレーションするための準備を行った.対象地域として,近年において大規模災害が発生した地域であり,シミュレーション結果の検証が比較的行いやすい新潟県と兵庫県を抽出した.これら地域を対象に,企業や人口分布に関する小地域統計や企業間取引を分析するのに重要となる交通ネットワークデータの整備を行った.分析モデルとして,地域間産業連関モデルと交通量均衡配分モデルをベースとした地域経済モデルを用い,公表されている地域間産業連関表をベースにパラメーターの推計を行った.このモデルと前述の調査結果を統合することで,社会基盤の機能支障の継続時間に応じた被害影響評価のマップを作成することができるため,今後の地域全体の社会基盤の性能を検討するための基礎資料となる.
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