当該年度は、本研究の最終目標に強く関連する二つの研究課題を推進した。一つは津波観測を実施している国内外の検潮施設ならびに津波観測のレビュー、もう一つは既存の沖合津波観測システムで収集したデータで得られた知見の整理とその津波予警報への適用の模索である。 まず国内外のリアルタイム観測点における津波観測指標を検討するため、とくにインド洋諸国の検潮所の現状ならびに津波研究に資する過去のデータ保存状況を調査した。タイ、インドネシア、インド、オーストラリアの検潮所の分布とデータ取得方法を整理して、各国の津波警報システムの発信手法をレビューした。この研究成果は国際誌に掲載された。また日本国内では、沿岸に設置された検潮所、GPS波浪計、および海底津波計の津波予警報への利用状況について最新の津波観測技術として整理して、一般向けの津波防災読本として出版される予定である。 次に国内でのリアルタイム沖合観測を津波予警報に資するために、過去の蓄積データからとくに近地津波をターゲットとして、津波発生の有無に区分して観測データを精査してその知見を整理した。海洋研究開発機構が運用する「北海道釧路・十勝沖海底総合観測システム」の2台の海底津波計で、津波を誘発する地震時には観測機器の直上では音響波が励起されることを確認し、これが津波を誘発する地殻変動量に強い相関があることを示した。したがって、沖合リアルタイム観測データを津波予警報へ利用する上で、この音響波が津波観測指標の一つとして活用できる可能性を示した。
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