高解像度の人工衛星観測データを用いて、日本海における冬季季節風分布に対する周辺地形の影響と、日本海の海洋フロントによって段階的におこる海上風の局地的変化を調べた。冬季の日本海での気団変質の理解をさらに深めるには、海上風分布に対する周辺地形の影響やシャープな海洋フロントに対する海上風の応答の研究が求められる。そして、下流にあたる日本列島で発生する局地風強風の解明のためにも、上流の風の変質過程の理解が不可欠である。今年度は、東北地方(山形県沖)に流入する風の経路に着目し、人工衛星等の観測のデータを中心に解析した。まず、ユーラシア大陸沿岸には、沿岸地形の影響を受けて強弱風域が交互に表れることを明らかにした。東北地方に吹き込む北西風は、ウラジオストックから北東に500km程度の範囲の地峡や山脈の影響を受けており、その影響がそのまま日本列島に到達することも多い。次に、北西季節風が日本海を吹走する間に、海洋フロントの影響を受けて、海上風自体がどう変化するかを調べた。極前線や対馬暖流フロントを境に暖水上で風速が増加していることが示された。これらは、対流混合層の発達と関連づけられた。また、このような海面水温フロントを境に、海上風の平均風速や変動エネルギーが増加していることが分かった。最後に、山形県の庄内平野周辺の気象観測データを調べ、日本海の暖流上での対流混合層の発達により、大気下層で鉛直一様になった風が日本列島に流入していることを明らかにした。来年度は、数値モデルを活用し、観測データでは十分な解析が難しい沿岸域について、対馬暖流上の風の変化と風が日本列島に流入する過程に重点を置いて研究を進める。
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