本研究は巨大地震発生時における被災者の人的被害を最小限に軽減する災害対応計画の提案を主たる目的とする。平成20年度は、以下の点について研究を実施した。 (1) 地震時における医療機関の医療活動能力モデル化のための調査・研究 平成20年度は、特に東海地震において大被害が予想される静岡県および近隣県の主要医療機関および消防機関、自治体に対し地震時の活動等に関するヒアリングを実施した。DMATに対しては参集・活動地点、活動内容、所要時間、消防機関に対しては傷病者搬送先医療機関、ヘリ搬送の実績についてヒアリングを実施した。 (2) MASモデルの拡張 平成20年度は、東海地震における傷病者をはじめとする各エージェントの活動を考慮するべく(1) 消防機関、(2) 災害拠点病院およびその他の主要医療機関のモデル化、(3) 静岡県を中心とする道路ネットワークのデータ整備を行なった。 また東海地震時の各エージェントの活動をシミュレーションするに当たり、2007年新潟県中越沖地震における各エージェントの行動に基づくシミュレーションを実施し、複数の傷病者搬送方法について検討を行った結果、被災地内の被害が比較的軽微な拠点病院を中継地点とする域外搬送が非常に有効であることが確認された。 また全国の任意の場所で発生した災害に対し本シミュレーションプログラムを実施可能なwebシステムのプロトタイプを構築した。(意義・重要性)今後高い確率で発生が予想される東海地震の傷病者搬送に関係する各エージェントの活動内容を把握すること、およびその活動経路となる道路ネットワークのデータを整備することは、シミュレーションを実施するために不可欠の情報であり、シミュレーションを通して、地震時の人的・物的被害を低減させるための方策を提案することが可能となる。
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