研究概要 |
インドールは生物活性天然有機化合物や医薬品に数多く見られる基本骨格であり、その穏和な条件での汎用性に富む構築法の開発は、有機合成化学における重要な課題である。また、一回の反応で複数の結合を形成する連続型反応(カスケード反応)は、反応に用いる溶媒や精製工程での廃棄物の量を削減できることから、環境調和型有機合成反応として注目されている。 本年度はアレナミドの分子内カルボパラデーション・アニオン捕捉カスケード反応を利用した新規な2,3一二置換インドール構築法について検討した。すなわち、2-ヨードアニリンから三段階で容易に調製したアレナミドを原料とし、これに様々な求核剤(アリールボロン酸、ビニルボロン酸、アルキルボラン、ビニルスズなど)の存在下、塩基とパラジウム触媒をエタノール中80℃で作用させることで、多種多様な2,3-二置換インドールを収率良く得ることができることを見出した。この際、用いる触媒と溶媒の効果が顕著であることを見出した。さらに本カスケード反応は、より安価ではあるが反応性が低い2-ブロモアニリンを出発物質として合成したアレナミドを原料としても、良好な収率で望むインドールを与えることを見出し、本方法の汎用性を実証した。本反応は、穏和な条件下で行えるため多様な官能基の共存を許容でき、またパラジウム触媒反応であるために芳香環電子密度の影響を受けにくく、複雑な基質に対しても適用可能であると考えられる。また、反応開発の過程で合成した化合物群をもとに、新規γセクレターゼ阻害剤の合成化学的探索を行った。
|