平成19年度、ハエトリソウの葉を閉じさせる活性を有する内生の低分子配糖体についての単離、構造決定を完了したが、各精製過程においては活性強度があまりあがらず、特に最終段階においては活性強度が弱くなってしまうという現象が見られた。そこで、この原因を解明するために各段階におけるカチオン量を測定することにした。キャピラリー電気泳動法を用いて各精製段階における金属カチオン含有量を測定したところ、精製効率の悪いステップにおいては金属カチオン含有量が大幅に減少するという結果が得られ、活性が金属カチオンに大きく依存するということが示唆された。そこで、実際に低分子配糖体の金属カチオンの種類による活性の変化を調べることにした。低分子配糖体における各種金属カチオンを変化させたものを調製し、それぞれの活性を調べた。その結果、プロトン(遊離酸)の場合は単離した最終段階精製フラクションとほぼ同等の活性を示したのに対し、ナトリウム塩の場合は10倍の活性強度を示した。さらに、カリウム塩の場合は100倍の活性強度を示し、カウンター金属カチオンの種類によって活性が大きく変化するという興味深い結果が得られた。この原因については今の所不明であるが、もともとこの低分子配糖体は生体内においてカリウム塩の状態で存在しているのではないかと考えられた。続いて、もう一つのハエトリソウの葉を閉じさせる活性を有する高分子活性多糖の精製を行った。低分子配糖体においてカウンターカチオンの種類によって活性値が大きく変化してしまうことが判明したため、高分子活性多糖の精製にあたっての精製スキームの再検討を行った。
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