海洋天然物化学は近年大きな発展を遂げ、数多くの生理活性分子が単離、構造決定されている。海洋天然物の中でも、繰り返し構造を有しておらず、高度に酸素官能基化された長い炭素鎖を有する「超炭素鎖有機分子」は、まさに海洋天然物特有の化合物群である。本化合物群はその構造的特徴と強い生理活性から、有機合成・薬理学・分子生物学の分野で注目を集めている。本研究では新規超炭素鎖有機分子シンビオジノライドの構造解明を目的とした合成研究を行っており、平成19年度の研究成果を以下記述する。 1. Cl'-C25'フラグメントの合成と絶対配置決定 D-xyloseを出発物質としCl'-C8'フラグメントを、またtri-O-acetyl-D-glucalを出発物質としC9'-C25'フラグメントを合成した。Julia反応により両フラグメントを連結し、Cl'-C25'フラグメントの合成を完了した。本化合物と天然物分解生成物との各種スペクトルデータの比較を行い、絶対配置を決定することができた。 2. C79-C96フラグメントの合成 分子内スピロアセタール化を用いることで、87位のスピロアセタール構造を立体選択的に構築した。さらにアセチリドートリフレートカップリングを用いることで側鎖部位を導入し、C79-C96フラグメントの合成を完了した。 3. C24-C33フラグメントの合成 2つの連続するエポキシド部位を有するC24-C33フラグメントの合成は、段階的にエポキシド部位を導入することで完了することができた。本化合物と天然物分解生成物とのスペクトルデータの詳細な比較を行ったところ、推定された立体化学が間違いであることを明らかにすることができた。 平成20年度も引き続き各フラグメントの合成と、これを基盤とした構造解明を行う予定である。
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