本研究は細胞の発生や分化に重要な役割を果たしている受容体型チロシンキナーゼ、特に繊維芽細胞成長因子受容体(FGFR3)の活性化メカニズム、活性制御のメカニズムにおける膜貫通(TM)部位、細胞質内膜近傍(juxtamembran:JM)部位の機能の解明を目的したものである。膜蛋白質には、その膜貫通部位において活性に影響を及ぼす変異が見いだされているものが少なくなく、そのような変異を導入した膜内在・膜近傍部位配列ペプチドの脂質二重膜中での構造解析からは、膜蛋白質の機能発現機構に関して重要な知見が期待できる。今年度はFGFR3TM-JM部位相当配列ペプチドの合成法の検討、TM-JM部位の脂質二重膜中での二次構造の解析、二量体化したTM部位の脂質二重膜中での構造解析を行った。試料の調製に関しては、TM部位配列相当ペプチドチオエステル、JM部位配列相当ペプチドを合成ブロックとしネイティブケミカルライゲーション法を用いた効率的な反応条件を見出すことに成功した。そこで得られた知見をもとに、TMJM部位配列ペプチドを調製し、脂質二重膜中での構造解析をCPMAS固体NMRにより行ったところ、TM部位の二重幕中での構造解析を行った。資料の調製に関しては、TM部位配列相当ペプチドオエステル、JM部位配列相当ペプチドを合成ブロックとしてネイティブケミカルライゲーション法を用いた効率的な反応条件を見出すことに成功した。そこで得られた知見をもとに、TMJM部位配列ペプチドを調製し、脂質二重膜での構造解析をCPMAS固体NMRにより行ったところ、TM部位はα-ヘリカル、JM部位はランダムな構造を有していることがわかった。さらに、TM部位配列ペプチドに関しては重水素固体NMRにより、野生型の配列、常時活性型変異が導入された配列に関して、それらの構造の比較を行ったところ、それら二つの配列ではdimerization interfaceが異なるという結果を得た。詳細な構造解析は現在進行中ではあるが、当受容体の活性化メカニズムを知るうえでは重要な知見を得ていると考えている。
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