マメ科作物には根粒菌が共生することが知られている。しかし、その感染成立、それに続く根粒形成過程での植物細胞と根粒菌の相互作用の詳細については十分に明らかになっていない。根粒菌とマメ科植物には厳密な相互認識機構が存在し、特定の共生パートナーのみを選別する。最近、申請者らは、マメ科植物の根に共生パートナーの根粒菌が感染する際、その極初期に感染部位で植物の病原応答のシグナル分子である一酸化窒素(NO)が産生されることを見いだした。そこで本研究は、根粒菌によるNO産生誘導機構の解明を目的とし、相互作用に関与する菌体側成分の分離、化学構造の解析、および植物側レセプターの同定を目指した。 本年度は、M.loti菌体成分のNO産生誘導活性の解析をおこなった。抽出したリポ多糖(LPS)、リポオリゴ糖(LOS)を、弱酸分解後分離し、多糖を主に含む画分、オリゴ糖を主に含む画分、リピドA画分を得た。NO活性化能を検討したところ、糖鎖およびリピド画分の双方にNO誘導活性があることがわかった。また、多糖画分とオリゴ糖画分を比べると多糖画分の方が活性が高かったことから、糖鎖によるのNO誘導活性は主に多糖部分が担っていることが示唆された。以上の結果は、NO誘導には少なくとも2つのレセプター認識構造が存在することを示しており、何らかの使い分けがなされる可能性が考えられた。
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