新しい抗感染症薬の開拓を目的に、1)MRSAに対するイミペネム賦活化物質stemphone類の作用機序の解析および2)抗Mycobacterium smegmatis活性を指標とした評価系(昨年度に報告)を用いて微生物資源からの新規抗結核活性物質の探索を行った。 1) 昨年度に合成した種々の誘導体のうち、ある種のo-アルキル誘導体がマクロファージ脂肪滴構成成分であるコレステリルエステルやトリアシルグリセロールの生合成阻害作用を示すことを新たに見出した。さらに、イミペネム賦活化の構造活性相関をもとに活性に影響しない19位水酸基をもつstemphoneDをビオチン化のための候補として選別し、この化合物を培養液中より大量取得した。本化合物とN-(+)-biotiny1-aminocapronic acidとを縮合剤の存在下で反応させビオチン化体の合成を達成した。本研究1の成果をベースに、MRSAタンパク抽出液からの結合タンパク質の特定へと発展させることは重要な課題でありその成果が新しい創薬ターゲットの提供につながると考えている。 2) 微生物培養液ライブラリー(約5000)より真菌Mortierella alpina FKI-4905株が選択された。その培養液中より、抗結核活性を指標にして溶媒抽出、各種カラムクロマトグラフィーおよび逆相系カラムを用いたHPLC精製によりFKI-4905物質を単離した。その構造については、質量分析や各種NMR解析をもとに解明し、本物質が自身の生育に必須な鉄キレーターであるmycobactinに類似した直鎖ヘキサペプチド構造を持つ新規物質であることを明らかにした。本物質はM.smegmatisに選択的な活性を有し従来の抗結核薬とは化学構造が異なることから、新しい作用点を持つことが期待でき、新しいタイプの抗結核薬としての発展が期待される。
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