研究概要 |
ビセライド類は沖縄県本部町備瀬付近の海岸で採集したホヤから単離している.またこのホヤには,沖縄県波照間島で採集した海綿から単離されているハテルマライドNAが含まれることがわかっている.化合物が取れた場所も生物も異なることから,ハテルマライドNAおよびビセライド類の真の生産者は海綿やホヤに共生する共生藻であると考えられる.申請者はビセライド類の真の生産者の解明と新規抗癌剤のリード化合物の探索を目的として,沖縄県備瀬海岸に生息する生物の中で,主に共生藻を有する生物を用いて研究することとした.抽出材料としては,カイメン,ホヤ,イソギンチャクを用いる.これら抽出材料の他に,今回は特にシアノバクテリアに注目する.多くの生理活性物質の真の生産者はシアノバクテリアであると推定されており,同じ海域で採集したシアノバクテリアにビセライド類が含まれる可能性が高い.沖縄県備瀬海岸で,シアノバクテリア9種類,カイメン6種類,ホヤ4種類を採集し,ビセライド類が含まれるか確認した.その結果これら採集した海洋生物にはビセライド類が含まれないことが明らかとなった.次に採集した海洋生物について,腫瘍細胞(HeLaS_3)の増殖阻害活性を指標にして新たな活性物質の探索を行った.その結果沖縄産のホヤ Didemnummlle から Hela S_3腫瘍細胞に対して中程度の増殖阻害活性を示す(IC_<50>=17Mg/mL]新規ヘキサペプチドを単離し,各種スペクトル解析,分解反応により絶対立体配置を決定した.また沖縄産シアノバクテリア2種類から強力な細胞増殖阻害活性を有する化合物を2種類単離した.これら化合物については現在構造解析中である.
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