研究概要 |
海洋産シアノバクテリアを抽出材料に用いて新規抗癌剤およびそのリード化合物の探索を行った.シアノバクテリアには約1500の機能未知遺伝子があり, 塩濃度や水温の変化により遺伝子発現がヒするため, シアノバクテリアに含まれる生理活性物質は環境により異なる可能性がある. これまこ同じ地点で同種のシアノバクテリアを定期的に採集し, 含まれる有機物質を調べたとごろ,季節より含まれる物質や含有量が異なることを確認した. 以上の理由からシアノバクテリアは, これまご報告されていない機能性有機低分子の探索に適した素材だと考えられる. しかしシアノバクテリアは他のカイメン, ホヤ, 軟体動物, サンゴ類に比べて量的供給が難しく, 純粋培養の確立が他の微生物と比較して困難である. そのためシアノバクテリアに含まれる生理活性物質に関する報告例は他の海洋生物に比べて圧倒的に少ない, 申請者は量的供給可能なシアノバクテリアを得るため, 三重県や沖縄県の干潟, 浅瀬の海岸を調査した. その結果これまでに数キログラム単位で採集可能なシアノバクテリアを十数種類得ることができた. これらシアノバクテリアの粗抽出物について腫瘍細胞(HeLa S_3)の増殖阻害活性を調べたところ, 7種類の粗抽出物に顕著な腫瘍細胞増殖阻害活性を確認した. 中でも活性の強かった2種のリングビア属のシアノバクテリアの抽出物について腫瘍細胞増殖阻害活性を指標として生理活性物質の探索を行った結果, Hela S_3腫瘍細胞に対して強い細胞増殖阻害活性を示す新規鎖状ペプチド,ビセブロモアミド(IC_<50>=45ng/mL)と新規マクロライド配糖体,ビセリングビアサイド(IC_<50>=0.10μg/mL)を単離し,各種スペクトル解析, 分解反応により絶対立体配置を決定した.
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