研究概要 |
本研究はウミホタル発光系の優れた性質を生かし,生化学や分子生物手法でウミホタルルシフェラーゼを改変し,生きた細胞や動物個体内での重要なイベントの非破壊的分析ツールとして確立を目指している。今年度において,まずウミホタルルシフェラーゼのリジン残基,糖鎖,C末端にビオチン基を導入し,得られるビオチンルシフェラーゼの生物発光活性について調べた。修飾したルシフェラーゼの残存活性はリジン残基,糖鎖,C末端での多い順であることが判明した。つぎに,得られたビオチン化ウミホタルルシフェラーゼを評価するため,プロスタグラジンE2に対する免疫競合アッセイを行った。その結果,ウミホタルルシフェラーゼによる発光検出法は従来の検出法よりも高感度であることがわかった。さらに,動物個体内でのイメージング試薬の創製をするたあに,ルシフェラーゼに有機蛍光色素や無機蛍光色素を導入し,修飾されたルシフェラーゼの発光スペクトルについて調べた。その結果,ルシフェラーゼの発光のエネルギーの一部がこれらの色素に発光共鳴エネルギー移動が起き,660nm付近の長波長側での発光シグナルが観測された。この発光プローブの発光は生体内のヘムなどの色素による光吸収領域と重なりが少ないので,小動物個体内の光イメージングに適していると考えている。さらに,pHやイオン濃度による発光プローブの発光スペクトルへの影響を調べた。発光スペクトルはpH6.5-8や塩濃度0.05-0.5Mの範囲では大きな変化がないことを確認できた。
|