本研究の目的は、ラオスの農村における水田とその周囲の景観において、植物相の記載、住民の植物利用や管理法の記録、種多様性維持機構の推定を行い、その結果をもとに地域に適した植物資源管理の方法を考察することである。 平成19年度には、ラオス中部ビエンチャン県サイタニー郡の村落で、9月(雨季)と2月(乾季)に、水田の草本植物と木本植物の分布を調査した。まず草本植物のインベントリーの作成では、希少種を含む多数の種が記録された。次に木本植物では、村の中心部から半径5km程度の水田に生育する樹木の分布地図を作成した。また、水田周囲の林地に四つのコドラート(50m×4m)を設定し、植生調査を行った。これらの調査項目は、当初の研究計画に沿って進められたが、達成できなかった計画が二点ある。一つは、記録された植物の同定と、現地名や利用法の確認であり、来年度の課題として残された。二つ目に、調査対象地が、予定していたラオス中部サワンナケート県からビエンチャン県に変更された。その理由は、ビエンチャン県の調査地はこれまでの調査の経験から状況をよく把握しており、水田の植物相の分析に集中できるからである。 本調査結果により、ラオスでは水田に多様な野生植物が生育し、それらが住民の生活において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。この結果は、ラオスの植物資源の管理を考える上で、これまで注目されてきた保護林だけでなく、人里の植生も考慮しなければならないことを示している。
|