本研究の目的は、ラオスの農村における水田とその周囲の景観において、植物相の記載、住民の植物利用や管理法の記録、種多様性が維持されているメカニズムの推定を行い、その結果をもとに地域に適した植物資源管理の方法を考察することである。 平成22年度には、ラオス中部と北部における現地調査を継続するとともに、これまでの調査結果をまとめ、地域に適した植物資源管理の方法を考察した。 まず、ラオスの水田植物には、食用として好まれるため市場で販売される種がある。ラオス全土12か所の市場で2000年8月から継続している調査の結果、合計20種の水田の草本植物が販売されており、住民の現金収入源となっていることが確認された。同様に、水田の周囲に広がる疎林の植物は48種類が確認され、水田と周囲の疎林が住民にとって重要な植物資源を供給していることが明らかとなった。次に、ラオスの在来植物の生育と競合する、外来植物の分布と侵入経路についてみると、焼畑の火入れの効果、ウシやスイギュウによる散布、洪水による散布、住民による移植により、ヒマワリヒヨドリ、ワルナスビ、シロバナセンダングサ、Mimosa pigraなどが生育地を拡大していた。一方で、道路沿いや屋敷地、焼畑耕作地に比べて、水田への外来植物の侵入は少なかった。 ラオスでは流通が整備されれば米の自給は達成されるとの報告があるため、水田において米の生産とともに野生植物資源を有効に利用・管理する方策が考察された。
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