東南アジア大陸部の自然資源利用がどのようにおこなわれてきたのかを明らかにするために、過去数十年の土地利用変化を復元し、その変化の過程と要因について研究している。研究対象地域は、ラオス北部の山岳地域に位置する盆地である。 今年度は、地域レベルにおいて、過去50年間にどのような土地利用の変化があったのかを検証した。山地部の森林は、1980年代に急激に耕地に転換したのち、1990年代から森林に戻っていた。森林への転換は、植林の事実がなかったことがら、植生遷移による回復であったと考えられる。また、同時期に、出生率と死亡率が上昇していた。昨年度までの調査結果から、人口の変動と耕地の拡大には、密接な関係があり、さらに人口の増加は時間的なギャップをおいて、土地の拡大に影響していることがわかっている。よって、1980年代の人口増加が直接同時期の森林転換に影響したとは考えられない。一方で、この時期は、社会的な混乱期、あるいは移行期にあたり、様々な社会的な慣習、地域における制度が否定され、中央政府による支配体系へと移行しようとした時期である。結婚、出産に関する地域制度、土地利用における村落内、村落問の決まりごとなどが一時的に捨てられたことが、森林面積の減少、出生率、死亡率の増加を引き起とした原因であると考えられた。
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